新興国市場ではボラティリティ上昇に伴い投資機会が広がる

ゴンザロ・パンガロ , ポートフォリオ・マネジャー
マイケル・コネリアス , ポートフォリオ・マネジャー
アーネスト・ユン , ポートフォリオ・マネジャー

サマリー

  • 世界中の市場がボラティリティの高い新たな時代に突入しており、新興国市場は特にその影響を受けそうです。
  • これに伴い、新興国の株式・債券市場ではセクター、銘柄間のパフォーマンス格差が再び広がり、これらの資産に魅力的なバリュエーションで投資できる新たな好機が生まれています。
  • 新興国株式と債券の投資家にとっては、広範な市場全体のリスクに加え、考慮すべき多くの地域固有のリスクがあります。
  • 今後は銘柄を厳選し、機敏に対応する能力が大いに役立つかもしれません。

極めて穏やかな投資環境が続いた2017年後半とは打って変わり、2018年に入ると、インフレ上昇、金融引き締め懸念、通貨の乱高下という大荒れの展開となり(図表1)、投資家はボラティリティの高い新たな時代に直面してます。新興国はこうした変化の影響を特に受けやすいため、新興国の株式と債券の投資家にとっては厳しい状況となっています。

 

図表 1: JP モルガン新興国債券ボラティリティ・インデックス

2017年6月5日~ 2018年6月4日

 

出所: JP モルガン

 

今年のボラティリティ上昇はこれまで2つの局面に分けられます。2月のVIX 急騰は大半がテクニカル要因によるもので、その主犯はボラティリティ連動型商品に投資されていた大量の資金でした。当初、インフレ懸念をきっかけにVIXが上昇すると、これらの商品はリバランスを余儀なくされ、ボラティリティが大きく増幅されました。

 

VIX は2月のピークから低下しましたが、昨年に比べるとまだ高止まりしており、現在は過去の平均に近い水準にあります。ボラティリティ上昇の第2幕は、よりファンダメンタルな要因によるもので、中央銀行の金融引き締め、貿易摩擦に関連した地政学リスク、中東情勢、多くの国での選挙などへの懸念が主な原因でした。

 

これらの一部は先進国に起因するもの(例えば、現在のイタリア政局)ですが、他の要因は新興国に特別大きな影響を及ぼす可能性が高く、新興国全体のボラティリティが高まっています。

 

ボラティリティが高い環境では、市場が穏やかな時より何に投資するかがより重要になってきます。市場の混乱期には、パッシブ戦略は有効性が薄れる可能性があり、投資家としては目標達成のためポジション構築に対してよりアクティブかつ選別的なアプローチを取らざをる得なくなるかもしれません。新興国の株式と債券では取るべきアプローチが異なるかもしれませんが、どちらの資産においても市場の混乱時にアクティブな運用を心掛けることが極めて大切です。

 

市場の混乱はグロース株式戦略に好機を提供

当社の新興国株式運用戦略では、グロース投資アプローチを採用しており、市場にボラティリティが戻ってきたことで、待ち望んだ差別化の機会がようやく訪れたと考えています。ここ数年は低利での資金調達 が可能で、市場環境が穏やかだったため、新興国では多くの平凡な企業でさえ株価が好調に推移しました。こうした時期が終わりつつあるとしたら、真に強いファンダメンタルズを有する企業はその力を見せつけることができるかもしれません。ボラティリティが高まると、市場ではパニックが起き、新興国の株式や債券に幅広い売りが出る可能性があります。しかし、本物を見極める知見とリソースを有する投資家にとっては、これは優良企業を魅力的なバリュエーションで購入できる絶好の機会を提供することになります。

 

グロース株式の投資家にとって最も魅力的な企業とは、資本構造が強固で、フリーキャッシュフロー創出力が高く、危機が発生した時に自らの市場ポジションを強化できる構造的な競争優位を有する企業です。また、資産と負債に関して通貨面のミスマッチがないことも大きな優位となります。米ドル建て債券の発行で低利資金を調達した企業は、自国通貨が米ドルに対して下落すると、たちまち苦境に追い込まれます。その典型が1994年のテキーラ・ショックに見舞われたメキシコ企業や、1997-1998年のアジア金融危機時の東アジア企業です。

 

当社の新興国バリュー株式運用戦略は、主として「忘れられた」銘柄、すなわち市場が関心を示さない企業に投資するので、ボラティリティはあまり関係ありません。 投資家に不人気なこうした銘柄は、株価変動に関係なく非常に割安であるため、ボラティリティ上昇の影響はさほど受けません。市場の混乱期にはこうした銘柄がさらに割安になり、投資妙味が一層高まることもありますが、バリュー株式戦略にはボラティリティの全体的な影響はグロース株式戦略ほど大きくないかもしれません。従って、「忘れられた」バリュー株式はグロース株式より潜在的なダウンサイド・リスクが低いと言えます。

 

為替変動が現地通貨建て新興国債券に大きな影響

新興国株式と同様、ボラティリティの復活は新興国債券にも歓迎すべき分散を幾分もたらしています。昨年のように、ボラティリティが人為的に抑えられている時は、債券の発行体にとっては非常に好ましい環境となり、本来なら起債しない方がよいか もしれない企業や国までもが低利の資金に引き寄せられて債券を発行します。これにより価格面の規律が損なわれます。2017年は債券の需給が非常に良かったため、価格が幅広く上昇した結果、銘柄固有の魅力的な投資機会を発掘することが難しくなりました。今年のようにボラティリティが高くなると、起債を見送る企業があり、ミスプライスも起きやすくなるため、市場ではより合理的な価格形成が行われるようになりました。年初は売り手が発行条件の主導権を握っていましたが、現在は買い手の力が強まっています。

 

新興国債券市場では通常、地域固有の要因が全体のボラティリティの約75%で、グローバルなマクロ要因の影響は25%に過ぎません。現在はこの割合が 50/50に近く、より難しい投資環境となっています。地域要因によるボラティリティはある程度分離し、それに乗じることができますが、グローバル要因によるボラティリティはそうは行かないからです。現在進行中の低利マネーの回収には3~5年かかるため、 この間とさらにその後も市場はボラティリティの高い状況が続くと思われます。

 

新興国債券の投資家にとってこの影響は、現地通貨建て債券と米ドル建て債券のどちらを買うかでかなり左右されます。現地通貨建て新興国債券のボラティリティは大半が為替変動によるもので、急激かつテクニカル主導です。 従って、現地通貨建て債券の管理には、時にはより小刻みかつ頻繁なポジション変更が求め られ、相対バリュー比較などの戦略も必要になります。

 

ドル建て新興国債券も為替変動の影響を受けますが、発行国のファンダメンタル要因の影響をより受ける傾向があります。このため、ドル建て新興国債券を評価する場合、我々はテクニカル要因主導のボラティリティの先にあるものを見据え、債券価格がそのファンダメンタルズから極端に乖離しているかどうかを見極めます。

 

各地域で選挙を控え、ボラティリティが高まる

新興国株式と新興国債券の両方の投資家にとって現在は、広範な市場全体のリスク以外にも、考慮すべき多くの地域固有のリスクがあります。例えば、トルコは6月に再選されたエルドアン大統領が経済に長期的なダメージを与える型破りな経済政策を推進しているため、一般的にリスクが非常に高いとみなされています。大統領が利上げに反対したり、明らかに中央銀行から金融政策の主権を奪おうとしているため、多くの投資家は現在の環境ではトルコをアンダーウェイトにするか、完全に敬遠する選択をしています。過去数ヶ月の間に、トルコでは株価が9年ぶりの安値を付けたほか、10年国債利回りが過去最高の水準まで上昇し、通貨も大幅に下落してます。こうした状況がいつ改善するのか見通しが立ちません。トルコ情勢が新興国全体の急落につながるとは考えていませんが、今後も状況を注意深く見守る必要があります。

市場の人気がない国などを含め、今後生じそうな投資機会の恩恵を受けるには、投資家はアクティブ運用戦略への配分を高めることを検討する必要があるかもしれない。

同じく、7月のメキシコ大統領選挙で新興左派のロペスオブラドール氏が当選した結果、一部の投資家は左派政党の経済政策が同国企業に及ぼす影響を懸念しています。これは米国とカナダとの北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し交渉の進展に対する懸念に加えてのものです。メキシコ・ペソは大統領選前に急落しましたが、ロペスオブラドール氏がバラマキ財政を否定し、中央銀行の独立性に干渉しないことをあえて強調したため、反発しました。大統領の言葉を額面通りに受け止めていいかまだ分からず、新大統領のメキシコ経済への長期的影響についてもなお懸念がありますが、短期的にはメキシコはトルコに比べてリスクが低いと見ています。

 

10月に選挙を控えたブラジルについても一部の投資家は懸念を抱いていますが、当社はこれも行き過ぎと考えています。誰 が大統領に選ばれても、マクロ経済の安定 を保つには財政赤字の削減に取り組まなけ ればならないのは明らかで、必然的に包括 的な年金改革法案が可決されるでしょう。 我々は選挙結果にかかわらず、こうした改 革が実施される可能性が高いと見ており、このため、ブラジル債券については市場が 現在織り込んでいるよりポジティブな見方 をしています。

 

南米以外では、ロシアは多くの投資家が慎重姿勢で臨んでいるもう一つの市場です。米国など西側諸国による追加制裁の影響などが懸念されていますが、ロシアはファンダメンタルズがかなり強固で、政府債債務に匹敵する外貨準備を保有しており、対外収支は健全で、主要産油国であるため原油高の恩恵も受けています。従って、主な問題は、ロシアと西側諸国の緊張が続き 追加制裁に発展するかどうかや、最終的に現実路線を取り、関係の正常化に動くかどうかです。6月15日時点では、当社はロシアについて新興国株式戦略ではオーバーウェイトにしていますが、新興国債券戦略ではアンダーウェイトとしています。

 

市場の混乱期は銘柄選択力が鍵を握る

今後は新興国株式と新興国債券の両方の投資家にとって厳しい状況が予想されます。 多くの新興国は、量的緩和から量的引き締めへの移行に対する不安によるグローバルなボラティリティ上昇の影響だけでなく、各国固有の政治・経済要因によるローカルなリスクにもさらされています。新興国市場が足並みを揃えて動いていた時は個別資産におけるポジションの重要性は低下していましたが、そうした状況は終わったと考えています。

 

パッシブ戦略は、市場が落ち着いている時に比べ市場全体の下げの影響を受けやすく、個別市場の歪みに乗じることができないため、ボラティリティが高い時はパフォーマンスが落ちる傾向があります。市場の人気がない国などを含め、今後数年で生じる可能性のある投資機会の恩恵を受けるには、投資家はアクティブ運用戦略への配分を高めることを検討する必要があるかもしれません。銘柄選択力と俊敏性が波乱含みの市場を乗り切る上で大いに役立つかもしれません。

 

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