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再び景気刺激策を導入する中国

マイケル・コネリアス , ポートフォリオ・マネジャー
アンドリュー・カール , ポートフォリオ・マネジャー
サミー・ムアディ , ポートフォリオ・マネジャー
  • 中国政府は米中貿易摩擦に伴う景気悪化懸念に対応し、金融、財政、規制の3つの政 策手段を通じた景気刺激策を再び実施しています。
  • 中国が景気下支えに動いたのは米国との貿易戦争のエスカレートに備えるという意味 もありますが、国内景気への配慮がそれ以上に大きな理由だと思います。
  • これによって投資家は中国経済がどこで下げ止まるか目処をつけることができるため、 他の新興国、特にアジア諸国に安心感が連鎖的に広がる可能性があります。

今年前半は新興国市場に対する投資家心理が悪化し、さらに最近はトルコの金融危機への 不安が強まる状況で、中国が景気下支えに舵を切ったことはポジティブな動きと言えます。 中国政府は景気への不安に対応すべく、金融、財政、規制の3つの政策手段を通じて慎重 ながらも緩和的な措置を打ち出しています。

 

しかし、中国の政策当局が介入に対する慎重姿勢を転換したことを手放しには喜べません。 過去10年を振り返ると、中国の政策は信用規制などの引き締め策と、景気下支えのための 緩和策が交互に繰り返されているからです。ちなみに、この間に緩和サイクルが実施された のは2009年、2012年、2016年です。

 

現在のアクションはおそらく新たなサイクルの始まりだと思いますが、世界金融危機の後の ような超大型の景気刺激策は期待できません。従って、コモディティ価格へのプラスの影響 も2009年や2016年のようには大きくないと思います。これらの政策は中国のGDPを0.3~0.5% 押し上げる程度で、中国経済がかつての高成長軌道に戻るのは難しく、成長率は政府目標 の6.5%前後に落ち着くと思われます。

 

金融政策の面では、中国人民銀行(中央銀行)は最近、流動性を増やすため預金準備率を 引き下げています。財政政策の面では、中央政府は新たな刺激策はほとんど実施していま せんが、地方政府にはインフラ・プロジェクト向けの融資再開を促す圧力が強まっています。 これは政策の優先順位が明らかに変わったことを示しており、中国政府はインフラ投資を再 びGDPの約10%まで押し上げようとしています。しかし、住宅政策は緩和されていません。

 

中国経済減速の新興国全体への悪影響に対する懸念は行き過ぎだと思います。こうしたネガティブなセンチメントは実際 には大半が先進国経済への不安から生じており、米国と他国の景気や金融政策の乖離が懸念されるほど大きいことや、 米トランプ政権の貿易相手国に対する好戦的な姿勢がその背景にあります。

 

米中貿易戦争がエスカレートした場合、その影響は明らかに重大です。今のところ最初の500億ドル分の中国製品に対す る米国関税の影響は比較的軽微です。しかし、米国が2,000億ドル相当の中国製品への追加関税を公言どおり実行する 場合、コストが上昇し始めるでしょう。当社の試算では、それにより中国のGDP成長率は0.3-0.5%下がる見込みで、中国は 成長目標の達成が難しくなるほか、ビジネス環境に対する信頼も揺らぐでしょう。

 

景気テコ入れに向けた中国当局の動きは、米国との報復関税合戦に備えた計画の一環のようであり、米国の脅威に抵 抗できることを示す狙いがあると思われます。しかし、これについては別の観点から考える必要があります。西側メディア は中国の政策決定を海外の動向への対応と取り上げがちですが、中国の資金流出入が規制されていることを考えると、 これにはやや異なる事情があります。

 

最近まで行われていた政策の引き締めは、ほとんどが中国の国内事情に対応したものです。この結果、通常の銀行シス テム以外のシャドーバンキング(影の銀行)の貸出が減るなど、数年前なら実行不可能と思われたほどのかなり大きな成 果が達成されました。最近の景気刺激策は、過度な調整の国内的な影響への対応に主眼が置かれていると思います。

 

中国公社債市場では今年前半に「質への逃避」が起き、リスクの高い一部の社債や地方政府債から、中央政府が発行す る国債や信用力の高い社債へと資金が流出しました。経営の安定した低格付け企業への資金供給が止まらないようする ことを目的に、政府が景気刺激に動いたことにより、国内投資家は銘柄を慎重に選ぶ必要はあるもののリスクを取りやす くなりました。従って、新興国全般に対する不安が後退するにつれ、中国の国債やAAA格社債が低格付け債をアウトパ フォームする流れは弱まり始めると思います。

 

通貨面では、景気刺激策は人民元安に歯止めをかける働きをしますが、中国が金融を緩和する一方、米国は金融を引き 締めているため、人民元の下落圧力は続きそうです。米国による中国製品に対する追加関税も人民元への下押し圧力を 強める要因です。しかし、中国人民銀行が無秩序な人民元安や投機的な人民元売りを封じ込めようとしているため、こう した圧力は抑制されると思います。

 

最後に重要なポイントは、中国で起きていることの海外投資家にとっての意味合いは、他の市場、特に中国を主な輸出先 とする大半のアジア諸国にはおそらくもっと重要と思われることです。中国政府は許容できる成長率について下限が存在 することを示唆しており、それは今年これまで楽観的になれる要素がほとんどなかった新興国市場の投資家にポジティブ な材料を提供することになると思います。

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