GLOBAL ASSET ALLOCATION

グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境(2018年9月)

トーマス・プラウエック , マルチアセット・ソリューションAPAC責任者

1. 市場テーマ

米国vs. メキシコ: 米国の真の狙いは?

今年は米国とその主要貿易相手国の間で様々な方面において緊張が高まり、貿易戦争の脅威が市場 の話題を独占しています。米国が北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に向けてメキシコと大筋で合意 したことで、カナダも交渉に加わり、最終的にこの問題が解決する可能性が出てきました。そうなれば、 米国は中国との交渉に集中できますが、本当の問題は、この合意が二国間合意に対するトランプ大統 領の意欲の表れか、それとも最大の敵、中国との「戦争」に専念することが狙いなのかという点です。

 

新興国: 混乱伝播のリスクは?

最近のドル高により、トルコ、アルゼンチン、南アフリカなど一部の新興国は経済状況がさらに悪化して います。大半の新興国は米ドル建て資金調達への依存度が大きく低下し、2013年5月のバーナンキ・ ショック後のような新興国危機が発生する可能性は低下していますが、巨額の経常収支赤字を抱える 国は引き続き脆弱で、インフレ上昇、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め、世界貿易に関する不 透明感、中国経済の減速という状況では特に不安定な状況です。こうしたリスクの多くは以前からくす ぶっており、全般に弱さが広がっていますが、新興国では各国個別の問題がより色濃くなり始めていま す。しかし、弱さが見られるのは総じてファンダメンタルズが脆弱な国に限られるため、本格的な危機を 心配するのは現時点では尚早だと思います。

 

「不安の壁」を登る強気相場

世界的な貿易戦争、新興国通貨の下落、中央銀行の金融き締め、金利上昇、ドル高という逆風下でも、 米株式市場は上昇基調が崩れず、8月下旬に1990年代の過去最長記録をついに更新しました。米国は 景気後退リスクが限定的で、大型減税や良好なファンダメンタルズを背景に企業収益は他の先進国を 大きく上回り、米国株は引き続き上昇気流に乗って他の株式市場をさらにアウトパフォームしています。 ただ、強気相場のピークアウトへの懸念が機会損失の恐怖に勝っていたため、この間の株価上昇は全 員参加型ではなく、投資家も高揚感に乏しいようです。

2. 各国の投資環境

米国

マクロ経済

  • 米景気はサイクル終盤にある。景気後退リスクは依然低いものの、そのリスクは徐々に高まりつつある。
  • 税制改革や規制緩和が景気を当面下支えるが、サイクル終盤での 刺激策は景気過熱につながる可能性もある。
  • 労働需給が逼迫する中、インフレ率や労働コストが徐々に高まって いる。
  • 積極的な通商政策には大きなリスクがあり、それが高まっているが、最終的な影響は限定的かもしれない。
 

金利

  • 短期金利はFRBの利上げに伴い上昇しており、2019年もこの流れ が続く見通し。
  • 長期金利は安定しているが、潜在成長率を上回る成長、財政赤字 拡大、FRBのバランスシート縮小などから上昇気味。
 

株式ファンダメンタルズ

  • バリュエーションは過去の平均を上回っており、勝ち組と負け組の 明暗が大きく分かれている。
  • 企業業績は非常に好調だが、現在の成長ペースを持続するのは 難しそうで、今後は鈍化する可能性がある。
  • 企業利益率は金利、賃金、投入コストの上昇による逆風に直面。
  • 業績が期待外れの企業は株価が大きく下落している。

 

通貨

  • トルコ危機のエスカレートなどから米ドルは逃避資金が流入し、 夏場に一段高となった。
  • 世界景気に対する米景気の相対的な強さが弱まる兆しが見られ るほか、貿易摩擦を巡る緊張が緩和するとの期待もあり、米ドル は目先的に軟化する可能性がある。

 

欧州

マクロ経済

  • ユーロ圏経済は減速しているが、安定が見込まれ、潜在成長率を 上回る成長が続く見通し。 貿易摩擦に伴う下振れスクはある。
  • スウェーデン総選挙でポピュリズム政党が躍進する可能性が高く、 政局混乱に対する懸念が再燃する可能性も。
  • イタリアの予算審議が引き続き主な注目材料。財政面の見通しが はっきりするまで、同国の信用力に対する懸念が続きそうだ。
 

金利

  • 最近のユーロ安に加え、インフレ上昇の兆しがさらに見られること から、金利は緩やかに上昇する可能性がある。
  • イタリアでは連立政権が初の予算で借入を増やすと懸念される中、 同国国債は引き続き記録的なペースで発行されている。
 

株式ファンダメンタルズ

  • バリュエーションは米国株に比べてやや魅力的。
  • 最近の業績改善傾向は続く見通しで、営業レバレッジが利益の 一段の上振れ余地を提供。
  • 欧州の銀行はトルコやイタリアへの懸念から、絶対ベースでも、 市場全体のとの比較でも、なお地合いが著しく悪い。
 

通貨

  • 政治リスク、ECBの金融政策、比較的低調な経済指標などが引き 続き米ドルに対してユーロの上値を抑えている。
  • 中期的な景気見通しやECBの金融政策見通しの観点からは、 ユーロは米ドルなどの通貨に対して引き続き魅力的。

 

中国

マクロ経済

  • 中国経済は2018年を通じて減速する見込み。8月の貿易統計は予 想を下回ったが、景気先行指標は貿易について若干ネガィブな動 きを示唆している。
  • 政策当局は引き続きより緩和的な措置で状況に対応するだろう。 最近の景気刺激策の影響はまだ実体経済に浸透していない。
  • 結局、景気は鈍化しているが、なお積極的に下支えられている。

 

金利

  • 中国人民銀行(中央銀行)は、社債デフォルトの多発や利回り上昇 による金融状況の引き締まりに対処するため、今年後半も慎重な 金融政策の枠組みを維持するだろう。

 

株式ファンダメンタルズ

  • 最近の大幅下落を受け、バリュエーション的にはリバウンドが見 込まれる。
  • 景気減速、貿易摩擦、特定セクター(ゲーム、教育、ヘルスケア) に対する規制強化などを受け、中国株に対する国内投資家のセ ンチメントは極端にネガティブになっている。
  • こうした問題が解決するまで、テクニカルなリバウンドは短命に終 わるかもしれない。

 

通貨

  • 緩和的政策の継続が人民元に下押し圧力をかけている。
  • 将来的には、中国人民銀行がより厳しい規制を再導入すると予 想されるため、人民元の下落ペースはより緩やかになるだろう

 

日本

マクロ経済

  • 貿易統計や鉱工業生産が示すように景気減速は続いているが、 外的ショックがなければ、日本経済は目先的に安定するだろう。
  • インフレ圧力の高まりは見られないため、現在の政策フレームワー クが当面維持されるだろう。
  • 自民党総裁選では安倍首相の3選が濃厚なため、マクロ経済政策 も安定が見込まれる。

 

金利

  • 日本銀行は緩和的な金融政策を引き続き再確認しており、インフレや経 済成長の現在の水準はまだ十分ではない。そうした政策の長期的影響 についての懸念が依然として議論の対象となっている。
  • 世界的な利回り上昇がイールドカーブ長期部分に影響を及ぼす可 能性も。
 

株式ファンダメンタルズ

  • 堅調な決算から株価の上昇が見込まれるが、短期的なテクニカル 指標や最近の資金フロー統計が短期リターンの頭を抑えている。
  • コーポレート・ガバナンスの改善など日本株市場を支える長期的な 材料は健全。
 

通貨

  • 円は当面、引き続きレンジ内で推移し、やや強含むと見ている。
  • 海外情勢が円急騰を招き、日本株を圧迫するリスクは残っている。

 

オーストラリア

マクロ経済

  • 消費者と企業の景況感が最近ともに低下し、景気が転機を迎えるこ とへの警戒感が台頭。
  • 王立委員会による銀行不祥事調査や、貸出基準へのその影響が、 住宅市場や家計景況感の安定を判断する上で引き続き注目材料。
  • 政治リスクは後退したようだが、将来の政策については疑問が残る。
 

金利

  • オーストラリア準備銀行(RBA)は利上げをさらに先送りしている。 賃金の伸びが引き続き落ち着いているため、失業率が安定していて も、利上げは当分ないと見られる。
 

株式ファンダメンタルズ

  • 海外勢がアンダーウェイトにしていることに加え、業績見通しも上方 修正されていることがオーストラリア株のサポート材料。
  • 金融セクターの問題や、貿易摩擦とそれに伴う中国経済減速による コモディティ価格の不透明感を考えると、オーストラリア株の長期的 な魅力はさほど大きくないかもしれない。
 

通貨

  • 豪ドルは首相交代を受けて下落したため、反発の余地がある。
  • ただ、オーストラリア経済は国内および外的要因による逆風を引き 続き受けているため、豪ドルの反発は小幅なものにとどまりそうだ

 

新興国

マクロ経済

  • 米中貿易戦争への警戒感が依然強く、短期的にも緊張が和らぐ 気配は見られない。
  • 中国経済が減速しているが、政策当局は緩和的な措置で引き続 き対応するだろう。
  • 主要新興国の一部は個別リスクや政治リスクが引き続き高い が、ドル高が続けば新興国全般に大きな影響が出る可能性があ るものの、システミック・リスクは低いと思われる。
 

金利

  • インフレ上昇や米金利上昇に伴い金融状況が引き締まるにつれ 金利が上昇傾向をたどる可能性がある。
  • 多くの中央銀行が引き締め路線へと転換している。
 

株式ファンダメンタルズ

  • 貿易戦争への懸念、ドル高、トルコ通貨危機などから新興国株は 大きく下落し、バリュエーション面の魅力はかなり高まった。
  • 利益成長が引き続き全般に強く、自己資本利益率(ROE)が幅広く 改善している。
  • 多くの新興国にとって外需が依然として極めて重要であるため、 貿易戦争に伴うリスクが引き続き警戒されている。
 

通貨

  • 8月初めのトルコ・ショックを受け、新興国株のバリュエーションは 過去の水準に比べて極端に割安な水準まで低下した。
  • トルコ・リラは地政学リスクの高まりを受け、なお脆弱に見える。
  • 対照的に、ロシア・ルーブルや南アフリカ・ランドなど一部新興国 通貨は売られ過ぎと見られ、今後反発する可能性がある。
  • メキシコ・ペソも米国との貿易交渉進展の恩恵を受ける可能性 がある。

 

3. アセット・アロケーション・コミッティのポジショニング

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