グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境

グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境(2018年10月)

トーマス・プラウエック , マルチ・アセット・ソリューションズAPAC責任者

1.  市場テーマ

 

米国(株式市場)の一人勝ち

米国株式市場は他市場を大きく上回るパフォーマンスを記録しており、年初来のアウトパフォーム幅は13%近くに達します。ドル高が米国以外の市場には逆風となる一方、新興国各国の固有リスクの高まりと それに関連した通貨安もリターンを圧迫しています。新興国不安は貿易や金融面のつながりがある一部 先進国にも波及しています。そして、貿易戦争に勝者ないかもしれませんが、投資家は貿易に関するネ ガティブなニュースに対して米国にとっては「悪影響は比較的少ない」という受け止め方をしています。 貿易戦争の行方は依然として不透明ですが、米国の好調な経済指標と20%を上回る企業の利益成長が これまで米国株を押し上げる推進力となっています。しかし、経済成長率と利益成長率の格差は縮小し 始める可能性があります。

 

債券に対して過度に弱気になるのは時期尚早?

米10年国債利回りは5四半期連続の上昇と2013年以降で最長となっています。同利回りは年初来で 0.65%以上も上昇し、10年近く続いた水準から上放れそうな状況です。貿易面の緊張が高まり、労働需給 が引き締まる中、インフレ期待がじわじわと高まっていますが、最近の金利急上昇は大部分が、米年金 基金にとって税制上の優遇措置が失効したことに伴う一時的なも のかもしれません 。供 給の増加に 加 え、米連邦準備理事会( FRB) 、米年 金基金、海外機関投資家など米国債の 大口 の買 い手 からの需要減退が 米国債利回りに上昇圧力をかける可能性がありますが、減税など財政政策 の景気刺激効果が一巡すると、米景気は潜在成長率を上回る現在のペースから鈍化する可能性がある ため、米10年国債利回りが過去10年の水準から大きく離れる可能性は低そうです。

 

新興国株式: リスクは織り込まれたのか?

貿易摩擦の激化、米金利の上昇、ドル高を受け、世界同時成長の恩恵を昨年最も受けた新興国株式市 場が大きく下落しています。MSCI 新興国株式インデックスは過去6ヶ月、S&P 500を米ドルベースで20%近くアンダーパフォームしており、バリュエーションも下がっています。新興国のマクロ・ファンダメンタ ルズは2013年のバーナンキ・ショック以降、総じて改善しており、経常収支も全体的に良好ですが、世界 経済が減速し、流動性がタイトになっており、ドル高がドル建て債務の多い新興国には逆風となっ ています。新興国株式はバリュエーションが米国に比べて30%ディスカウントの水準にあり、新興国通貨 も割安感があるため、新興国市場は魅力が高まっているように見えますが、本格的な回復には、貿易摩擦 の緩和、ドルの安定、米国と海外の成長率格差の縮小などの材料が必要かもしれません。

 

 

過去の実績は将来のパフォーマンスを保証するものではありません。

*米10年国債利回りと米10年インフレ連動債利回りの差。

出所: ファクトセット・リサーチ・システムズのデータを使ってティー・ロウ・プライスが分析。

2.  各国の投資環境

 

米国

マクロ経済

  • 財政支出、税制改革や規制緩和が景気を当面下支えるが、サイクル終盤での刺激策は景気過熱につながる可能性もある。
  • 労働需給が逼迫する中、インフレ率や労働コストが徐々に高まっ ている。
  • 積極的な通商政策には大きなリスクがあり、それが高まっている が、最終的な影響は限定的かもしれない。

 

金利

  • 短期金利はFRBの利上げに伴い上昇しており、2019年もこの流れ が続く見通し。
  • 潜在成長率を上回る成長、財政赤字拡大、FRBのバランスシート 縮小などを背景に、長期金利は徐々に上昇している。
 

株式ファンダメンタルズ

  • バリュエーションは過去の平均を上回っており、勝ち組と負け組の 明暗が大きく分かれている。
  • 企業業績は非常に好調だが、現在の成長ペースを持続するのは 難しそうだ。
  • 企業利益率は金利、賃金、投入コストの上昇による逆風に直面し そうだ。
 
  • ドル高は一服したが、市場は景気や金利に関する米国の圧倒的 優位に陰りが見え始めたのか見極めようとしている。
  • 米国は財政赤字や貿易赤字など長期ファンダメンタルズが好まし くないことから、ドルには割高感がある。
 

欧州

 

マクロ経済

  • 景気は減速しており、景況感指標は9ヶ月ぶりの低水準にある。
  • イタリアの2019年予算案では財政赤字がGDP比2.4%と欧州連合(EU)や市場の予想を上回り、同国とEUの交渉は難航しそうだ。
 

金利

  • 緩やかな成長が続けば、最近のユーロ安に加え、インフレ上昇の 兆しがさらに見られることから、金利は緩やかに上昇する可能性 がある。
  • 欧州中央銀行(ECB)は最近、2019年の量的緩和(QE)解除に対 するコミットメントを改めて確認した。
 

株式ファンダメンタルズ

  • バリュエーションは米国株に比べてやや魅力的。
  • 最近の業績改善傾向は続く見通しで、営業レバレッジが利益の一段 の上振れ余地を提供。
 

通貨

  • 短期的には、政治リスクがユーロの見通しに大きな影響を及ぼし ており、引き続き上値を抑えている。
  • 中期的には、QE解除や相対的に魅力的なバリュエーションが ユーロを下支える見通し。
 

中国

 

マクロ経済

  • 中国経済は2018年を通じて減速する見込み。政府統計は極めて 緩やかなソフト・ランディングを示唆している。
  • 政策当局は引き続きより緩和的な措置で状況に対応するだろう。 最近の景気刺激策の影響はまだ実体経済に浸透していない。
  • 結局、景気は鈍化しているが、なお積極的に下支えられている。
 

金利

  • 中国人民銀行(中央銀行)は金融状況の最近の引き締まりに対処 するため、年後半も慎重な金融政策の枠組みを維持するだろう。
  • インフレは上昇傾向にあり、金融面から積極的な刺激策が実施さ れる可能性が低いことを裏付けた。
 

株式ファンダメンタルズ

  • 最近の大幅下落を受け、バリュエーション的にはリバウンドが見込 まれる。
  • 中国A株に対するセンチメントはまだあまり改善していない。貿易摩 擦や規制変更に伴う不透明感がなお強い。業績予想は下方修正 が依然として多く、トレンドが変わっていないことが確認された。
  • 複数のインデックス提供会社が中国A株をそれぞれのインデックス に組み入れると最近発表したことは、資金フローの観点から中期的 なサポート材料である。
 

通貨

  • 緩和的政策の継続が人民元に下押し圧力をかけている。将来 的には、中国人民銀行がより厳しい規制を再導入すると予想さ れるため、人民元の下落ペースはより緩やかになるだろう。
  • 人民元が節目の1ドル=7.0元まで下落するかどうかが注目され ている。現在の状況を踏まえると、目先的にはその可能性は低 そうだ。
 

日本

 

マクロ経済

  • 景気が予想以上に好調なため、最近の天災による悪影響を乗り 切れる見通し。
  • 安倍首相の自民党総裁3選が決まり、政策面の不透明感が払拭 された。財政面からの景気刺激策が発表される可能性がある。
 

金利

  • 日本銀行は緩和的な金融政策を引き続き再確認しており、インフ レや経済成長の現在の水準はまだ十分ではない。そうした政策の 長期的影響に対する懸念が依然として議論の対象となっている。
  • 世界的な利回り上昇がイールドカーブ長期部分に影響を及ぼすだ ろう。
 

株式ファンダメンタルズ

  • 設備投資が堅調なことから、日本企業の資金の使い方が変わりつつ あることがうかがわれる。これは自己資本利益率(ROE)の改善を通じ て日本株の再評価につながると思われる。
  • 魅力的な相対バリュエーション、着実な利益成長、そして特に コーポレート・ガバナンスの改善など日本株市場を支える長期 的な材料は健全。
  • 日本株市場が9月のような強い勢いを保つのは難しいだろうが、ファ ンダメンタル的には当面、良好なパフォーマンスが見込まれる。
  • 円は当面、引き続きレンジ内で推移し、やや強含むと見ている。
  • 海外情勢が円急騰を招き、日本株を圧迫するリスクは残っている。
 
 

オーストラリア

 

マクロ経済

  • 最近は設備投資、住宅建築許可件数、PMIなどの経済指標が引き 続き軟化している。これは4-6月期に約6年ぶりの高水準に達した GDP成長率が今後鈍化することを示唆している。
  • 王立委員会による銀行不祥事調査や貸出基準へのその影響が、 住宅市場や家計景況感の安定を判断する上で引き続き注目材料。 

 

金利

  • オーストラリア準備銀行(RBA)は利上げをさらに先送りしている。 賃金の伸びが引き続き落ち着いているため、失業率が安定してい ても、利上げは当分ないと見られる。
  • 住宅ローン金利の上昇と家計債務へのその影響を注視している。 このためオーストラリア準備銀行(RBA)が予想外の利上げに踏み 切ることも考えられるが、それは当社の基本シナリオではない。
 

株式ファンダメンタルズ

  • 直近の企業決算は売上が好調な一方で、コストも急激に増えた。 このため、利益率に下押し圧力がかかっており、業績予想が相次 いで下方修正されている。
  • 金融セクターの問題や、貿易摩擦とそれに伴う中国経済減速によ るコモディティ価格の不透明感を考えると、オーストラリア株の長 期的な魅力はさほど大きくないかもしれない。

通貨

  • 豪ドルは首相交代や新興国市場の弱さを受けて下落したため、反 発の余地がある。
  • ただ、オーストラリア経済は国内および外的要因による逆風を引き 続き受けており、豪ドルの反発は小幅なものにとどまりそうだ。
 

新興国

 

マクロ経済

  • 米中貿易戦争への警戒感が依然強く、短期的にも緊張が和らぐ気 配は見られない。
  • 中国経済が減速しているが、政策当局は緩和的な措置で引き続き 対応するだろう。
  • 主要新興国の一部は個別リスクや政治リスクが引き続き高いが、 システミック・リスクは低いと思われる。

 

金利

  • インフレや米金利の上昇によるリスクが高まる中、金利は上昇傾向 をたどっている。
  • 多くの中央銀行が引き締め路線へと転換している。
 

株式ファンダメンタルズ

  • 貿易戦争への懸念、ドル高、通貨安などから新興国株は大きく下落し、バリュエーション面の魅力はかなり高まった。
  • 企業利益の伸びは依然として比較的強いが、期待は低下して きている。
 

通貨

  • トルコやアルゼンチンなどの金融引き締めを受け、新興国通貨は 安定してきた。
  • 一部の通貨は過度に売り込まれた反動で急反発したが、バリュ エーションは過去の水準に比べて概ね魅力的。

3. アセット・アロケーション・コミッティのポジショニング

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