見通し

2019年グローバル市場環境見通し

ジャスティン・トムソン , インターナショナル株式部門CIO
アンドリュー・マコーミック , ポートフォリオ・マネジャー
デイビッド・ジルー , ポートフォリオ・マネジャー
アーシバルド・シガネール , 日本株式運用戦略ポートフォリオ・マネジャー
  • 景気サイクルにおける現在の位置を踏まえれば、景気減速のリスクは平均より高いと見込まれるものの、2019年に グローバルな景気後退に陥るリスクは 比較的低いと見る。

  • 金融政策の分断、テクノロジー株上昇に伴うバリュエーションの格差拡大、地政学リスクの不透明感などが世界の金融市場を分断、撹乱させる要因となりうるだろう。

  • こうした変化の激しい市場環境において、勝者と敗者を正確に見極めることがリターン獲得の鍵となるだろう。

ティー・ロウ・プライスでは、2019年はテクノロジー、政治、経済、金融など様々な形の撹乱要因がグローバル金融市場の行方を左右すると考えています。


景気サイクルの終盤に移行しつつある米国では、FRBが利上げを実施する一方、他の先進国間では金融政策の方向性や信用状況の乖離が目立っており、株式市場と債券市場の双方でボラティリティが再び高まる可能性があると見ています。
 

米中貿易戦争、英国の欧州連合(EU)からの合意なき離脱の可能性(2019年3月)、イタリア財政赤字を巡る同国とEUの対立再燃などの政治リスクが不透明感をさらに増幅させています。
 

これらはティー・ロウ・プライス運用部門共通の認識であり、本書では米国株式およびマルチアセット最高運用責 任者(CIO)兼投資戦略部門責任者のDavid Giroux、 株式部門CIOのJustin Thomson、2019年1月1日付で債券部門責任者に就任するAndy McCormickの3名が2019年の市場見通しについて解説します。
 

撹乱は市場の変動要因

企業を取り巻くグローバルなビジネス環境は、技術革新と消費者嗜好の変化の相乗効果により、引き続き劇的に変化しており、その過程で既存のビジネスモデルが根底から覆されています。こうした競争の激しい環境では、勝者と敗者の見極めが超過収益獲得のカギを握るとGirouxは主張します。
 

「こうした変革が至る所で見られる現在の環境は、向こう10年間、アクティブ運用に有利に働くだろう。優秀なアクティブ・マネジャーは長期投資の恩恵を享受し、今後5~10年にわたり顧客ポートフォリオに超過収益をもたらす投資ができる」(Giroux)

一方、短期的には、政治や金融政策、通商などの問題から、2018年にも見られたようなボラティリティの短期急騰の可能性をグローバルの投資家は意識したほうがよいでしょう。2019年とその後も続くと思われる主要な6つの「撹乱」事象を取り上げ、以下に図で解説します。
 



世界経済の成長鈍化

2018年10月発表の国際通貨基金(IMF )予測による と、2019年は先進国全般および中国の経済成長が鈍化する見通しです(図表1)。
 

図表1
世界経済は減速傾向

実質GDP成長率の実績と予測値、
2018年10月時点



出所:IMF
*IMF予測
 

米国は景気サイクルの頂点近辺にあり、下振れリスクもありますが、健全な民間セクター、旺盛な消費需要、2017年減税の残存効果が2019年前半を通じ景気拡大を支え続けると予想しています。
 



欧州は景気サイクルの初期の段階にありますが、昨年10–12月期以降は成長が鈍化しています。英経済は引き続 きブレグジットに伴う不透明感が重荷となっています。

 

ユーロ圏ではドイツの労働市場に過熱の兆しが多少見ら れますが、その他大半の欧州諸国では、失業率が高止まりしており、これがインフレ圧力を抑制する半面、所得の伸びも制限しています。ユーロ圏では家計の貯蓄率が再び高まっていることも2019年の成長率を抑える可能性があります。

 

IMFの予測では、2018年に景気が急減速した日本は2019年も一段の鈍化が見込まれます。一方、明るい材料には、日本企業の収益率が最高水準にあり、デフレ・リスクが後退したことが挙げられます。
 

中国は高成長軌道に戻れるか?

中国は2018年終盤に経済指標が減速し、景気の先行きが特に懸念されます。自動車販売やマカオのカジノ売上高など個別の消費指標にも弱さが見られます。
 

「重要なのは景気刺激策の規模だ。中国政府は企業部門の債務を削減しようとしているが、その緩和策の一環として特定分野での選別的な減税や銀行預金準備率引き下げを実施できる余地がある」(Thomson)。
 

IMF予測では、中国の減速は他の主要新興国の回復により相殺され、新興国全体の景気は2019年も安定すると見込んでいます。
 

米金利上昇とイールドカーブのフラット化が下落リスクを生む

米景気は鈍化していますが、失業率が引き続き低下し、インフレに上昇圧力が掛かるとティー・ロウ・プライスのエコノミストは予想しています。こうした状況で米金利上昇とイールドカーブのフラット化が進めば、2020年に急激な景気減速のリスクを高める恐れが指摘されます。
 

グローバル株式はバリュエーション格差が大きく、「選球眼」が求められる

10月末時点で、米国株のバリュエーションは欧州、日本、新興国よりも高く、特に新興国株に対しては割高感があります(図表2)。しかし、その際には各国のセクター・ウェイトの違いも考慮する必要があるとGirouxは指摘します。

図表2
米国株のバリュエーション は相対的に高い

1年先予想PER、
2018年10月31日時点

出所: ファクトセット、MSCI、ティー・ロウ・プライス。米国=MSCI米国インデックス、欧州=MSCI欧州先進国インデックス、 新興国=MSCIエマージング市場インデックス、日本=MSCI日本インデックス
 

米国株市場はテクノロジー、ヘルスケア、ビジネス・サービスが時価総額の多くを占め、平均PER(株価収益率)が大半の欧州株市場を上回っています。欧州株市場はテクノロジー・セクターのウェイトが低い半面、PERの低い金融株のウェイトが非常に高いのが特徴です。

セクター・ウェイトの違いを考慮すれば、米国株と欧州株の相対バリュエーションは従来のレンジ内にとどまっているとGirouxは主張します。ただし、「欧州は米国より景気サイクルの初期段階にあるので、欧州株はバリュエーションの話だけではなく循環面でも、米国株より魅力的と言える」(Giroux)。

米国株のバリュエーションは状況に応じた解釈が必要

米国株のバリュエーションは従来に比べ過度に割高ではないとGirouxは見ています。2018年11月半ば時点で、S&P500の予想PERは約15.5倍と過去20年の平均15.9倍に近い水準となっています。しかし、米国は景気サイクルの終盤に移行しつつあるため、このPER水準は過去の平均が示唆するほど魅力的ではない可能性があるとGirouxは警告します。
 

「企業収益が一旦ピークアウトすると、ピーク水準に戻るには通常3~5年はかかる。したがって、S&P500は2024年のEPS(1株当たり利益)の15.5倍の水準にあると考えることもでき、視点を変えれば、状況が大きく違ってく る」(Giroux)。

新興国の株式や債券に対する買い意欲が強まるのは新興国通貨が安い時であり、今その時を迎えている
- Justin Thomson, Chief Investment Officer, Equity

新興国資産については、新興国通貨の極端な過小評価が同資産の魅力を高めると見ています。「新興国の株式や債券に対する買い意欲が強まるのは新興国通貨が安い時であり、今その時を迎えている」(Thomson)。
 

構造変化がグロース株とバリュー株の関係を撹乱

投資スタイル間の相対バリュエーションへも撹乱の影響が及び、バリュエーションにおいて勝者と敗者の明暗が極端に分かれています(図表3)。

図表3
株式バリュエーションは 二極化

1年先予想PER、バリュー株に対する グロース株の相対PER、
2018年10月時点

出所:ファクトセットのデータをもとにティー・ロウ・プライスが作成
*1998年9月~2018年10月、**1997年12月~2018年10月
 

多くの投資家は創造的破壊と大手テクノロジー・プラットフォーム企業を同一視しますが、そうした状況は他のセクターや業界でも見られます。例えば、エネルギー市場は、シェール革命と競争力の増した太陽光/風力発電という2つの強力なトレンドによる創造的破壊が起こっています。

「ティー・ロウ・プライスの計算では、S&P500の企業は時価総額の約31% 、売上高の最大35%が何らか構造変化の影響を受けている」(Giroux)。
 

構造変化がバリュー・トラップを生む

現在苦境にあえぐ企業は今後10年先も売上高や利益の成長が過去10年より鈍化しそうで、バリュエーションも大きく下がる可能性があるとGirouxは警告します。
 

「企業が長期的試練に見舞われると、PERは利益成長を超過して低下する。こうした銘柄には投資すべきではない」(Giroux)。
 

米国以外の市場でも同じように二極化の傾向が見られるとThomsonは指摘します。日本株の場合、MSCIジャパン・インデックスのPERは2018年10月31日時点で12.03倍と比較的低水準にありますが、日本市場は株主リターンを増やしている企業とそうでない低迷している企業に明確に分かれています。「そうした状況では、PERなどのバリュエーション指標はあまり役に立たない」(Thomson)。



一方、新興国株全体のバリュエーションは構造変化によってより魅力的になった可能性があります。2018年7–9月期末時点で、テクノロジーはMSCIエマージング市場インデックスの27%を占め、ほぼゼロだった10年前とは隔世の感があるとThomsonは言います。これは中国の巨大テクノロジー企業の成長だけでなく、知的財産をベースとする新興国の高付加価値産業の台頭も反映しています。

「新興国株は大きな成長ポテンシャルがあるだけでなく、投資機会も拡大、深化している」(Thomson)。
 

グローバル信用サイクルの非同期化がボラティリティ上昇を招く

2008–2009年の世界金融危機からの回復以降、世界の信用サイクルはますます足並みが乱れています(図表4)。 McCormickはこうしたトレンドが2019年も続くと予想しています。「各国の金融政策が異なる局面にあることがボラティリティ上昇の引き金となりそうだ。すべての力が同じ方向に働く時、市場は理解しやすいが、現在はやや複雑な状況になっている」(McCormick)。

図表4
グローバル信用サイクルは 同期性が低下

マクロ経済ポジションに関する ティー・ロウ・プライスの推定、
2018年9月30日時点

出所: ティー・ロウ・プライス
 

近年は多くの主要市場でボラティリティが低水準にとど まっていましたが、主要国中銀が金融危機後に供給した資金の回収に動くと、状況は一変しました。現在はFRBがバランスシートを縮小し、欧州中央銀行(ECB)も金融緩和を後退させており、「中銀の金融緩和姿勢が変化する中で市場はバリュエーションの新たな均衡点を模索 している」(McCormick)。
 

中銀の金融緩和姿勢が変化する 中で、市場はバリュエーションの 新たな均衡点を模索している
- Andy McCormick, Head of U.S. Taxable Fixed Income

ドル高の行方が大きなカギ

米景気加速と金利差拡大を受け、米ドルは2018年1月から10月の間に貿易加重ベースで8%以上も上昇しました。2019年もドル高が続くのか、それとも反転するのかが海外市場、特に新興国市場の相対的な魅力度を大きく 左右するでしょう。
 

「ドル相場が極めて重要だ。リターンへの為替レートの影響だけでなく、多くの市場でドル高はドル資金の調達コストを高めており、これは別の形の金融引き締めと言える」

(Thomson)。
 

McCormickは米国と海外の景気格差が2019年のドルの行方をほぼ決定づけると見ています。もし市場が米景 気が減速していると捉えれば、FRBの利上げサイクルが終了に近づいているか、少なくとも引き締めを一時停止すると判断するでしょう。他国の成長率が高まるケースでも、ドル安につながる可能性があります。
 

「米景気が上振れするか、イタリアの債務問題が予想より深刻化しユーロが不安定化すれば、ドル高が続く可能性がある。しかし、ドル高が止まるようなら、米投資家にとっては米債券資産の一部をグローバル市場に移す絶好の機会となるだろう」(McCormick)。
 

一部の債券セクターは景気サイクル終盤に好成績を残す

債券セクターはこれまで景気サイクルの局面に応じて様々なリターンのパターンを示してきました(図表5)。 米景気が2019年にサイクル終盤に入るにつれ、一部のセクターは相対的な投資妙味が高まる可能性があると

McCormickは指摘します。

図表5
債券は信用サイクル中盤 から終盤へ移行中

超過リターンのシャープ・レシオ*、
2018年10月31日時点

*デュレーションの等しい国債に対する超過リターンに基づく。セクター・リターンはCMBSと新興国投資適格社債を除き1994年1月以降。
CMBSは2000年1月以降、新興国投資適格社債は1998年1月以降。サイクル終盤とは、以下のいずれかの市場環境を指す。
•経済成長が加速し、FRBが金融引き締め政策を実施している局面。引き締め政策とは、実質FFレートがウィリアムズ/ローバック中立金利 とその12ヶ月移動平均の両方を上回ることと定義。
•経済成長が減速し、FRBが金融引き締め政策を実施している局面。引き締め政策とは、実質FFレートがウィリアムズ/ローバック中立金利 より低いが、その12ヶ月移動平均より高いことと定義。
出所: 米連邦準備銀行、ゴールドマン・サックス、ブルームバーグ・ファイナンスLP。データ分析はティー・ロウ・プライス。
 

「サイクル中盤では、アグリゲート債券インデックスは非常に良好なリスク調整後リターンを記録する。しかし、サイクル終盤にはリターンが低下する。リターンは必ずしもマイナスではないが、リスクを取るのに見合うほど十分ではない」(McCormick)。

McCormickはサイクル終盤に相対的に好パフォーマンスを残してきた債券セクターとして以下のものを挙げています。

■  変動金利バンクローン:2018年は好調な米景気が信用ファンダメンタルズを支える一方、ロンドン銀行間金利(LIBOR)変動金利バンクローン:2018年は好調な米景気が信用ファンダメンタルズを支える一方、ロンドン銀行間金利(LIBOR)

■  ローン担保証券(CLO)同変動金利商品は通常、主要格付機関からAAA格付けを付与されながらも、クオリティの低い投資適格社債並みのLIBORスプレッドで取引されてきました。短いデュレーション特性と構造的な信用補完がCLOを魅力的なものにしており、特に信用サイクルの終了が近づくにつれ、魅力が高まっているとMcCormickは見ています。

■ . 新興国債券新興国の国債と社債はいずれも米信用サイクルの終盤にアウトパフォームしてきました。その背景には、米ドルが下落に転じ、それがコモディティ価格の上昇や新興国の財政状況の好転につながったことがあります。

■  短期国債/投資適格社債2018年にリスク資産への投資で好収益を得た投資家にとっては、米イールドカーブの短期部分へ投資をシフトすれば、比較的低いボラティリティで相対的に魅力的な利回りを獲得できるチャンスとMcCormickは見ています。

Girouxは比較的大きく値下がりした米国債について投資の検討を推奨しています。米国債は2017年と2018年の好景気/金利上昇局面では低迷しましたが、中長期ゾーン の米国債は利回りが比較的魅力的な水準となり、ドイツや日本など主要国の国債との比較では特に魅力的です。

「景気サイクルのこの段階では、ポートフォリオの守りを固める意味で国債を保有することは理にかなっている」(Giroux)。

景気サイクルのこの段階では、 ポ-トフォリオの守りを固める意味で 国債を保有することは 理にかなっている
- David Giroux, Chief Investment Officer, U.S. Equity and Multi-Asset

地政学要因が市場の混乱を招く可能性も

いくつかの政治リスクが2019年のグローバル市場に混乱をもたらす恐れがあり、中でも米中の本格的な貿易戦争は最も深刻なリスクです。
 

トランプ政権の中国製品への関税引き上げや中国の報復措置は、中国への売上依存度の高い米企業の株式にすでに悪影響をもたらしています。米国の中国関連上位銘柄は2016年と2017年にS&P500を大幅にアウトパフォームにしましたが、2018年夏に米中貿易摩擦が沸点に達すると、その超過リターンの大半が瞬時に消滅しました(図表6)。

図表6
貿易戦争への懸念が中国 関連株を直撃

売上高に占める中国の割合が高い
S&P500銘柄の相対リターン、
2018年10月31日まで

売上高に占める中国の割合が高い企業のパフォーマンスは、S&P500採用企業の中で中国における総売上高の割合が高い 上位15社のパフォーマンスの均等加重平均(2018年8月27日時点)。
出所: ストラテガス・リサーチ・パートナーズ、ファクトセット・リサーチ・システムズ、ティー・ロウ・プライス。
データ分析はティー・ロウ・プライス。
 

ティー・ロウ・プライスのエコノミストは、中国の輸出品に対する関税引き上げは米景気拡大に実際のダメージを与える可能性はあるものの対処可能と予想しています。しかし、トランプ政権が輸入するすべての自動車や自動車部品に追加関税を発動するという「脅し」を実行した場合、米国と世界経済の双方にとって2019年の見通しは暗転する可能性があると見ています。

Girouxはマーケットが米中貿易紛争の解決について悲観的になり過ぎているのではないかと考えています。中国政府は関税引き下げ、知的財産に関するセーフガード、米国製品・サービスの購入拡大など一部の分野で米国の主張を受け入れる用意があることを示唆しています。「問題はそれがトランプ政権にとって十分かどうかでありその答えは誰にも分からない」(Giroux)。

トランプ政権内には、合意が成立したとしても中国がそれを守ることを信用しない向きもあるとGirouxは指摘します。他の幹部は中国を非難することが2020年の大統領選挙に向けて有利に働くと計算しているかもしれません。

それでも、その経済的な恩恵や資産価値の押し上げ効果を考えると、トランプ大統領には中国と交渉する強い政治的インセンティブがあるとGirouxは見ています。
 

リスクは米中貿易戦争だけではない

米中貿易戦争の他にもいくつかの地政学リスクがあり、以下のような要因が今後、ボラティリティ上昇の引き金となる可能性があると思われます。
 

■  ブレグジット英政府とEU首脳は英国のEU離脱協定案に合意しましたが、英議会での承認は予断を許さず、主な課題が今後数年にわたり英国とEUの関係を複雑にしそうな情勢です。EU離脱に関するネガティブなニュースが投資家心理を圧迫してきましたが、正式に合意が成立すれば、英国資産、特に英ポンドを大きく押し上げることになるとThomsonは言います。

■  イタリア:2018年に誕生したポピュリズム(大衆迎合主義)政党の連立政権がEUの財政赤字基準を上回る景気刺激型の予算案を提示したため、EUとの対立が深まっています。しかし、デフォルト・リスクを示す指標はこうした懸念がまだスペインやアイルランドなど他のユーロ周辺国に波及していないことを示唆しています。「このことから市場が現時点では単一通貨ユーロの崩壊というテールリスクはまだ限定的と考えていることがうかがえる」(Thomson)。
 

■  米政治:11月の中間選挙では民主党が下院の過半数を奪回しましたが、上院は引き続き共和党の支配下にあるため、Girouxはこの結果を「何も起こらなかった」もしくは「少なくともニュートラル」と受け止めています。「メインイベントは上下両院の議席と大統領の座がすべて争われる2020年の選挙だろう」(Giroux)。
 

厳しい市場環境が投資機会を生む

2018年はボラティリティが突如急騰し、グローバル市場、特に株式市場を大きく動揺させました。2019年も景気減速、流動性縮小、金融政策の乖離、政治リスクなどが原因でこうした状況が続きそうです。一方、技術革新や競争激化が多くのグローバルの既存トップ企業を引き続き脅かし続けるでしょう。
 

景気サイクルの終盤になると、 市場の動きが読みづらくなるのは 当然だ。しかし、それは戦略的な投資アプローチを取るのに最適な時期でもある
- Andy McCormick, Head of U.S. Taxable Fixed Income

こうした投資家にとって優しくない市場環境を迎え、市場は過大債務を抱える企業、時代遅れのビジネスモデル、高インフレ債務国などに対し、厳しい目を向け始めたとMcCormickは指摘します。この結果、個別銘柄リスクを見ることがますます重要になっています。しかし、こうしたリスクの裏には、アクティブ運用者にとっては、魅力的 な投資資産へ極端に割安な価格で購入できるチャンスと見做すこともできます。それには徹底した調査とファンダメンタルズ分析が不可欠となります。
 

「景気サイクルの終盤になると、市場の動きが読みづらくなるのは当然だ。しかし、それは戦略的な投資アプローチを取るのに最適な時期でもある」(McCormick)。
 

2019年、日本株にはまだ多くを期待できる

  • 日本株のファンダメンタルズは引き続き良好である。魅力的な相対バリュエーション、堅調な収益の伸び、コーポレート・ガバナンスの改善などがポジティブな理由。

  • 日本企業は手元資金をより効率的に活用している。2019年は自己資本利益率(ROE)の改善に伴い、日本株はこうした点から再評価される可能性がある。

  • 日本企業の収益力は他の主要市場を上回っており、クオリティの高い企業に照準を絞ったアクティブ運用の投資家に豊富な投資機会を提供している。

2018年は米金利の上昇、中国経済の減速、米中貿易戦争などの逆風下で、グローバル市場では投資家のリスクテイク意欲が試されました。こうした状況では、日本株も大半の主要市場と同様、苦戦を強いられました。株価下落は相場のリード役が少なくなったことも一因であり、株式市場にとって申し分のない環境だった2017年の勢いが衰えるにつれ、プラスのリターンを記録する銘柄が減りました。
 

しかし、ティー・ロウ・プライスでは、日本株は2019年も引き続き有効に機能する特性を保持しており、安定した国内経済や減速気味ながら拡大が続く世界経済により下支えられると考えています。日本株のバリュエーションは長期平均を下回っており、業績は好調で、市場の構造改革も企業収益の拡大を支えると思われます。
 

減速しながらも安定した経済が引き続き下支え要因

全般的な見通しは引き続き良好ですが、逆風が強まっており、2019年は世界経済の減速が予想されます。日本株は景気以外の要因にも左右されますが、世界経済は株式市場に大きな影響を及ぼします。グローバル経済からの主なリスクは米中貿易戦争に起因するものです。その影響でアジアのサプライチェーンが大混乱に陥れば、日本の製造業やハイテク産業は大きな打撃を受けます。
 

国内に目を転じると、2019年に実施予定の消費税増税は長期的には経済の安定要因ですが、足元の景気を悪化させる恐れがあります。政府は増税の影響を軽減すべく今 後1年、景気刺激策を追加すると予想されます。
 

さらに広く見れば、日本銀行は今後も金融緩和政策を継続するでしょう。インフレ指標は最近上昇していますが、インフレの現在の水準や賃金の伸びは日銀の目標を依然下回っています。
 

良好な株式ファンダメンタルズ

2019年は世界経済が減速する可能性がありますが、日本株を支えるファンダメンタルズは健在です。魅力的な相対バリュエーション、堅調な収益の伸び、そしておそらく最も重要なコーポレート・ガバナンスの改善が2019年の日本株の見通しについてポジティブな理由です。
 

また、設備投資のデータは日本企業が手元資金をより効率的に使っていることを示唆しています。2019年はROEの改善に伴い、日本株はこうした点から再評価される可能性があります。自社株買いや増配も引き続き活発で、短期的に株式市場を下支えしています。
 

自社株買いや増配も引き続き日本株市場の特徴で、短期的に株式市場を下支える
- Archibald Ciganer 日本株式運用戦略 ポートフォリオ・マネジャー

アベノミクスと改革のインパクト

アベノミクスとそれに伴う市場・経済改革がスタートしてから6年が経ち、その主な成果には以下のものがあります。
 

  • 失業率は25年ぶりの低水準で、女性の労働参加率が急上昇している1。
  • 財政赤字が半減した。
  • デフレ・リスクが後退した。
  • 企業のキャッシュ創出力が過去最高の水準にある。
  • コーポレート・ガバナンスの基準が引き上げられた。
     

中でも、ガバナンス基準の改善は特に注目すべき点です。政府はより強靭かつグローバル競争力の高いビジネス環境の整備に本腰を入れており、コーポレート・ガバナンスやスチュワードシップ・コードを矢継ぎ早に打ち出しました。
 

株主利益の改善や社外取締役の採用拡大を企業に義務 付けた結果、日本の株式市場に対する関心や信頼感が再び高まっています。日本企業はこうした課題に見事に対処しています。例えば、2004年には独立社外取締役を採用していない企業が過半数でしたが、今日はほとんどの日本企業が社外取締役を1名以上採用しており、2019年以降もこの流れは続くと思われます。
 

日本企業の収益は好調

ここ数年の日本株市場の回復に関しておそらく最も驚くべき側面は、企業セクターの強さでしょう。2018年も日本企業全体の利益は過去最高を更新し、他の主要市場を大きく上回っています。
 

特筆すべきは、日本企業がその膨大なキャッシュフローを従来より効率的に使っていることです。かつての日本企業は手元に資金を溜め込む傾向があり、ごくわずかなリターンしか生んでいませんでした。政府が改革に本腰を入れていることに加え、海外投資家からの圧力もあり、日本企業は手元資金をより効率的に活用し、増配や自社株買いの形で株主還元に力を入れるようになっています。こうし た流れは2019年も続き、日本経済と株式投資家の両方に恩恵をもたらすポジティブな刺激剤となるでしょう。
 

図表1
日本企業はコーポレート・ガバナンス が劇的に改善
独立社外取締役を採用する企業が増えている
2017年12月時点

出所: 企業報告書、日本取引所グループ、エンピリカル・リサーチ・パートナーズ
 

ポートフォリオ・ポジショニング

私がポートフォリオ・マネジャーを務める日本株式運用戦略では2019年もポートフォリオ内でいくつかの主要な投資テーマに焦点を当てていきます。我々が探しているのは、電子決済、消費者嗜好の変化、少子高齢化、人手不足など日本で起きているファンダメンタルな社会的変化の恩恵を直接受ける企業です。
 

当運用では資本財セクターを引き続きオーバーウェイトにしており、人手不足の環境において労働力を供給する人材紹介・派遣会社や、生産ラインの自動化が進む中で需要が高まる高性能機械のメーカーに投資しています。また、バリュエーションや投資利益に着目し、特定の通信会社も保有しており、これらの銘柄は下値の固さも見込まれます。
 

対照的に、低コスト国との競争に直接さらされている分野への投資は引き続き避けています。例えば、中国はバリューチェーンのより高付加価値分野にシフトしており、日本の伝統的製造業の牙城を脅かしています。鉄鋼やセメントなどの分野は海外勢との競争圧力にさらされており、こうした傾向は今後も続くと思います。銀行セクターに対してはネガティブな見方をしており、金融政策が近い将来に引き締められる可能性は低いと思われるため、銀行株は保有していません。
 

図表2
日本企業は群を抜く 収益力を誇る
日本の企業利益は他の主要市場を 凌いでいる
2018年6月30日時点.

過去の実績は将来のパフォーマンスを保証するものではありません。
出所: ファクトセット・リサーチ・システムズ

まとめ

2019年に入っても、日本株はバリュエーション面から引き続き魅力的と考えています。日本企業の利益成長は海外企業を上回る可能性が高く、改革の流れが日本株にとってポジティブな材料を提供すると思います。
 

世界経済は引き続き日本株のパフォーマンスに影響を及ぼす主な要因です。
 

2019年は世界経済の鈍化が予想されますが、減速気味ながらも安定した成長環境が引き続き日本の優良企業を下支え、これらの銘柄は比較的良好なパフォーマンスが期待できます。
 

一番懸念されるのは、米中貿易戦争がさらにエスカレートすることです。このシナリオが現実のものになると、好ましい成長環境が脅かされますが、当運用では質の高い銘柄をポートフォリオに多く組み入れているため、市場のボラティリティが急上昇しても、それに対する耐性が比較 的強いと思います。
 

日本企業の利益成長は海外企業を上回る可能性が高い
- Archibald Ciganer 日本株式運用戦略 ポートフォリオ・マネジャー

重要情報

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