ASSET ALLOCATION VIEWPOINT

グローバル・アセット・アロケーションの視点と投資環境

トーマス・プラウエック , マルチアセット・ソリューションAPAC責任者

市場テーマ

2018年6月30日時点

 

貿易戦争: 停戦か破局か?

貿易戦争がエスカレートする中、市場ではそれがいつ、どのように終わるのか一段と不安が広がっています。今のところ、米国と中国は関税の報復合戦で互いに譲れない状況に陥っており、欧州連合(EU)とカナダも米国製品への報復関税によってこれに参戦し、北米自由貿易協定(NAFTA)も再交渉が検討されています。米経済は大半の貿易相手国より貿易依存度が低いのは確かですが、ターゲットを絞った関税は米国の特定セクターや企業に大きな影響を及ぼす可能性があります。一部の業界は関税によるコスト上昇で利益率の低下に直面し、値上げに踏み切る可能性があります。米国は中国やEUとの貿易収支が赤字であるため、 交渉で優位に立っていると感じるかもしれませんが、武器は関税だけでなく、外国企業に照準を絞った報復措置、保有する米国債の売却、為替操作なども選択肢として考えられます。現在の状況は流動的なため、それが市場にどのような影響を及ぼすのか予測するのは困難ですが、多方面で戦闘が繰り広げられ、武器の選択肢も増えているため、事態が著しく悪化することも十分考えられます。

 

新興国市場にとって酷暑となるのか?

各方面での不安が高まり、新興国の債券、株式、通貨は厳しい状況に直面しています。エスカレートする貿易戦争の結末に対する不透明感が強まる中、投資家は新興国資産を売却しています。貿易戦争以外にも、米連邦準備理事会(FRB)を筆頭に先進国の中央銀行が金融緩和を解除し、米ドル高と金利上昇が進む中、流動性が低下しています。一部の新興国はすでに通貨防衛のため利上げを迫られています。主要新興国で選挙が行われるほか、FRBは着実に利上げを行う方針で、貿易戦争がいつ終わるかも分からない状況では、いくつかの新興国にとって今年はうだるように暑い夏になるかもしれません。明るい面に目を向けると新興国資産は最近の幅広い下落でリスクの多くはすでに織り込まれた感があり、脆弱さが目立つ一部の国もバリュエーション的に魅力が出てきました。

 

何がグロース株の王座転落のきっかけとなるのか?

テクノロジーおよび一般消費財セクターの相対パフォーマンスは好調が続き、グロース株はバリュー株に対する数年来のアウトパフォームがさらに続きました。2014年以降、米国ではグロース株が50%近く上昇し、バリュー株の3倍以上のリターンを記録しました。グロース株は明らかに低成長環境の恩恵を受けています。こうした環境では投資家は景気敏感セクターではなく、「耐久性のある」グロース株を求めますが、グロース株は利益成長が圧倒的に高いのも事実です。しかし、これまでの上昇はテクノロジーなど一部の企業に主導されたもので、これらの企業は現在、バリュエーションが高くなっています。米中の貿易戦争が激化すると、テクノロジー産業のサプライチェーンも打撃を受ける恐れがあり、投資家はこれらの企業のバリュエーションを疑問視するようになるかもしれません。

 

過去の実績は将来のパフォーマンスを保証するものではありません。

出所: ファクトセット・リサーチ・システムズ、JPモルガン、IMF、ヘイバー・アナリティクス

1 使用した指数: 新興国株式 = MSCI 新興国株式インデックス、新興国債券 = JP モルガン EMBI グローバル・インデックス、新興国通貨 = JP モルガン新興国通貨インデックス

 

各国の投資環境

米国

マクロ経済

  • 米国は景気サイクル終盤にある。景気後退リスクは依然低いが、 リスクは高まりつつある。
  • 税制改革や規制緩和が景気を当面下支えるが、サイクル終盤での 刺激策は景気過熱につながる可能性もある。
  • 労働需給が逼迫する中、原油高も重なって、インフレは徐々に正常化しつつある。
  • 積極的な通商政策には大きなリスクがあり、それが高まっているが、最終的な影響は限定的かもしれない。
 
金利
  • 短期金利はFRBの利上げに伴い上昇しており、2019年もこの流れが続く見通し。
  • 長期金利は変動が激しいが、景気改善、インフレ期待の高まり、財政赤字拡大、FRBのバランスシート縮小などから長期的に上昇傾向をたどりそうだ。
 
株式ファンダメンタルズ
  • バリュエーションは過去の平均を上回っており、勝ち組と負け組の明暗が大きく分かれている。
  • 企業業績は非常に好調だが、現在の成長ペースを持続するの は難しそうだ。
  • 企業利益率は金利、賃金、投入コストの上昇による逆風に直面。
  • 業績が期待外れの企業は株価が大きく下落している。
 
通貨
  • 世界経済の安定、海外の金融引き締め、バリュエーションなど が中期的にはドルの逆風となりそうだ。
  • 最近はドル買いポジションの継続や貿易摩擦の激化に加え、相 対的に高い利回りに後押しされ、ドルは上昇している。
 

欧州

マクロ経済

  • ユーロ圏経済は減速しているが、今後は安定が見込まれ、潜在成長率を上回る成長が続く見通し。
  • 保護貿易主義の高まりが大きなリスク。輸出依存度が高いドイツとっては特に脅威。
  • イタリア国債の利回りは政局混乱を受けて急上昇した後、ピークからは低下してきたが、市場が経済政策を見極めようとする中、利回りは高止まりしている。

 

金利

  • 持続的成長や最近のユーロ安に加え、インフレ上昇の兆しがさら に見られることから、金利は緩やかに上昇する可能性がある。
  • 最近のイタリアの政治動向、ユーロ圏強化を目指すマクロン仏大統領の改革の行き詰まり、移民を巡る各国間の緊張などから欧州連合(EU)の持続可能性について懸念が再浮上してきた。

 

株式ファンダメンタルズ

  • バリュエーションは米国株に比べてやや魅力的。
  • 最近の業績改善傾向は続く見通しで、営業レバレッジが利益の一段の上振れ余地を提供。
  • 欧州の銀行は絶対ベースでも、他のセクターとの相対ベースでも地合いが非常に弱い。

 

通貨

  • 政治リスク、ECBの金融政策、依然低調な経済指標などが引き続き米ドルに対してユーロの上値を抑えている。
  • バリュエーションは為替レートの観点から依然魅力的で、最近弱まっているものの景気とECBの政策見通しが引き続きユーロの支援材料。

 

中国

マクロ経済

  • 中国経済は2018年を通じてスローダウンする見込みで、製造業関連指標は在庫積み増しの影響で比較的底堅いが、最近の経済統計は予想を下回っている。
  • 貿易戦争への懸念が強く、景気の減速が予想されるため、マクロ政策が当面景気を下支える見通し。成長は鈍化しているが、引き続きアクティブにコントロールされている。

 

金利

  • 軟調なマクロ経済指標や貿易戦争への懸念を受け、預金準備率引き下げを通じ緩和的な政策が取られている。
  • 一方、国内企業のデフォルトが増えているため、金融状況は若干タイトになりそうだ。

 

株式ファンダメンタルズ

  • 中国A株(人民元建て株式)がMSCI 新興国株式インデックスに採 用され、株式市場への資金流入がある程度見込まれるが、中国 株のポジショニングはすでに比較的高い水準にある。
  • 最近の大幅下落を受け、バリュエーション的にはリバウンドが見込まれる。
  • ただ、短期的なリバウンドが起きる前に、貿易交渉に進展が見られる必要がある。

 

通貨

  • 最近の緩和政策は人民元に下押し圧力をかけているが、今年の人民元安は主として米ドルに対してで、人民元は他の通貨に対しては上昇している。
  • 当面は同様のパターンが続くと予想され、その後、人民元は中期的には緩やかな上昇傾向をたどると見ている。
 

日本

マクロ経済

  • 景気減速が続いているが、一部の景況感指標や製造業関連指数は回復を示唆している。外的ショックがなければ、日本経済は短期的に持ち直すかもしれない。
  • 労働需給が極端に逼迫しているものの、賃金の伸びは期待された ほど大きくないかもしれない。しかし、内需の弱さに対する懸念を 和らげるにはある程度の賃金上昇が必要。
  • 安倍内閣の支持率が大きく回復していることから、マクロ政策は当面安定が見込まれる。

 

金利

  • 日本銀行は緩和的な金融政策を引き続き再確認しており、政策変 更は当面ないと思われる。インフレや経済成長の現在の水準はま だ十分ではない。
  • 世界的な利回り上昇がイールドカーブ長期部分に影響を及ぼす可 能性も。

 

株式ファンダメンタルズ

  • 短期的には、日本株式市場は貿易摩擦を巡る海外情勢を背景に引き続き不安定な展開が予想される。
  • 魅力的な相対バリュエーション、堅調な収益の伸び、そして特に コーポレート・ガバナンスの改善など日本株市場を支える長期的 な材料は健全。

 

通貨

  • 円は当面、引き続きレンジ内で推移し、やや強含むと見ている。
  • 海外情勢が円急騰を招き、日本株を圧迫するリスクが残っている。s
 

オーストラリア

マクロ経済

  • 経済活動は昨年から改善。純輸出と政府支出が1-3月期の成長に主として寄与。
  • 最大の国内リスクは、銀行業界の不祥事を調べている王立委員会の調査報告である。これを受け、銀行が貸出基準を引き締めれば、住宅価格や消費者心理が長期にわたり低迷する可能性がある。

 

金利

  • オーストラリア準備銀行(RBA)は利上げをさらに先送りしている。賃金の伸びが引き続き落ち着いているため、失業率が安定していても、利上げは当分ないと見られる。

 

株式ファンダメンタルズ

  • 最近の株価上昇を受け、バリュエーションは割高になっているが、オーストラリア株式市場は他の先進国市場に比べるとバリュエーション面において引き続き魅力的である。
  • 業績予想の上方修正は最近減っているが、引き続き過去の平均を上回っている。

 

通貨

  • 短期的には、豪ドルは外部要因(つまり、米ドルの方向性)主導 の展開となり、2016年以降のレンジにとどまる見通し。米中貿易摩擦が激化すれば、最近の豪ドル安に拍車がかかる可能性も。
 

新興国

マクロ経済

  • 景気は減速しているが、失速しておらず、年後半は安定しそうだ。
  • 保護貿易がリスクではあるが、米中の対話が続く限り、経済への実 質的な影響は限定的なものにとどまる見込み。
  • 貿易戦争への懸念が強く、景気の減速が予想されるため、マクロ政策が当面景気を下支える見通し。成長は鈍化しているが、引き続きアクティブにコントロールされている。
  • メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラ、マレーシア、トルコなと゜の主要新興国では固有または政治的なリスクが引き続き高い。

 

金利

  • インフレ上昇や米金利上昇に伴い金融状況が引き締まるにつれ、 金利が上昇傾向をたどる可能性がある。
  • 多くの中央銀行が緩和/中立路線から引き締め路線へと転換している。

 

株式ファンダメンタルズ

  • 貿易戦争への懸念、米ドル高、各国固有リスクの高止まりなどから株価が大きく下落し、バリュエーション面の魅力はかなり高まった。
  • 輸出に対する需要は健全であるが、減退しつつある。
  • 利益成長が引き続き全般に強く、自己資本利益率(ROE)が幅広く改善している。

 

通貨

  • 新興国通貨のバリュエーションは米ドル高、各固有のファクター、顕著な資金流出などから割安になった。
  • 米金融政策、世界経済、政治動向、貿易摩擦なかどが引き続き新興国にとって主な注目材料。

アセット・アロケーション・コミッティのポジショニング

 

 

201807-542508

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