ブログ

Q&A: トランプ、貿易、そしてインフレ – 懸念すべき材料か?

ニコライ・シュミット , チーフ・インターナショナル・エコノミスト

1. 最近のボラティリティ急上昇は何が原因だと思いますか?

それは主にテクニカルな要因によるものだと考えています。当時の市場環境は全体として非常に落ち着いており、また現在も穏やかです。しかし、今回はボラティリティ連動型商品への投資が膨らんでいました。ボラティリティが上昇すると、これらの商品はリバランスを余儀なくされます。全体の額が大きい場合、リバランスによってボラティリティが一段と急激に高まる可能性があります。今回起こったのはまさにこの現象だと考えています。最初にボラティリティが上昇し、ボラティリティ連動型商品のリバランスによってそれが大幅に増幅されたのです。

2. 世界経済が現在直面している主なリスクは何ですか?

主なリスクは貿易摩擦の高まりに起因するものと考えています。米トランプ政権による中国への関税措置については、多くの情報が飛び交っています。米国は今や朝鮮半島の南北対話の実現に意欲を見せており、それに伴い、米朝の仲介役としての中国の存在感が低下しています。この結果、米国が中国に対して関税措置を実施する可能性が高まるかもしれません。トランプ大統領はまた、北米自由貿易協定(NAFTA)における米国の通商条件改善を引き続き要求しており、実現しなければ離脱も辞さない構えです。しかし、中国もメキシコも、制裁には非常に巧妙に対抗してくる可能性があることも認識しておかなければなりません。例えば、中国は米国からのソルガム(モロコシ)の輸入に焦点を当てていますが、これはトランプ大統領が頼りにしている共和党の一部支持基盤への打撃を明確に狙っています。

11月の中間選挙が近づくにつれ、貿易をめぐるトランプ大統領の強硬発言が増えるかもしれませんが、そこまで強硬な政策が実際に行われることはないと考えています。米国経済の動揺はトランプ大統領の利益にはならず、共和党は中間選挙に向けた追い風を必要とし、まだ先のこととはいえトランプ大統領も自身の再選に向けて支持を確立する必要があるからです。

3. インフレ率は上昇するでしょうか?

これは重要な問題です。私を含め多くの人が米国では失業率の低下を受けて2017年にインフレ率が上昇すると予想しましたが、そうはなりませんでした。従来の失業率とインフレ率の逆相関関係(フィリップス曲線)は崩れ、その理由はまだはっきりしません。しかし、フィリップス曲線に組み込まれた需要と供給の法則は今でも健在で、最終的には失業率の低下は賃金の上昇をもたらし、延いてはインフレにつながると考えています。ただし、経済学は理屈どおりには行かないことを忘れてはなりません。経済学によってタイミングや正確な相関関係を予測できると考えているとしたら、それは過度な要求と言えます。フィリップス曲線から今後のインフレの程度やその実現時期が分かると期待するのは非現実的ですが、長い目で見ると低失業率がいずれ賃金や価格の上昇圧力につながると予想するのは理にかなっています。
 

米国の税制改革法に含まれる住宅ローン利子控除の減額は、一定のデフレ効果があるかもしれません(住宅価格はインフレ指標の住居費項目を押し上げる傾向があり、利子控除の減額は住宅価格の逆風になると思われるためです)。しかし、最終的には、需給ギャップが縮小するにつれて賃金上昇圧力が高まり、総合インフレ率やコア・インフレ率の上昇につながると思われます。
 

欧州は米国と状況が異なります。全体として、ユーロ圏経済には米国よりも労働市場のスラック(需給の緩み)が存在し、インフレ圧力はより落ち着いています。ドイツでは労働組合と企業双方が賃上げに前向きな様子であるため、賃金上昇圧力は徐々に高まると予想しています(最近まで移民の大量流入が賃金上昇圧力を抑制していた面もあります)。日本でも労働市場は逼迫しており、一定の賃金上昇圧力を予想しています。
 

4. 世界経済についてポジティブな見通しをしていますか?

欧州は今のところ見通しが非常に明るい状況です。ユーロ圏は外需ではなく内需主導の景気回復局面にあります。失業率は低下しており、金融状況は依然として比較的緩和的な状態で、ユーロ安が続いています。こうした追い風の一部は弱まりつつありますが、景気は回復基調がしっかり定着しており、ユーロ圏経済には金融引き締めが必要になるほどのインフレ圧力を伴わずに成長できる余力があります。
 

中国政府は以前より景気減速にうまく対処していますが、中国経済は足取りが鈍っています。シャドーバンキングを過度に規制しようとすると混乱を招く恐れがありますが、当局は慎重な行動を取り、今後も成長を後押しすると思われます。問題は、当局がそれをどのように、いつ決定するかということだけです。政府が景気テコ入れに動くには、その前に景気への不安が高まる必要があると思います。実際、これまではそうしたやり方でしたが、2017年半ばには景気が悪化する前に政府が先手を打って行動を起こしました。また、中国の動向がコモディティ価格に大きな影響を及ぼすことを忘れてはなりません。したがって、中国経済が順調に拡大しているうちは、コモディティ価格も堅調な動きが見込まれます。
 

より懸念されるのは米国で、エネルギーおよび鉱業以外のセクターでは設備投資が精彩を欠き、この2セクターにおける追い風も弱まり始めています。住宅取得能力が今後も低下し、住宅投資の弱さが続くことが懸念されます。さらに、原油価格の反発によって家計の購買力が一部損なわれています。これまでは貯蓄率の低下によって相殺されてきましたが、貯蓄率は極めて低い水準にまで落ち込みました。家計の貯蓄率が回復すると、米国のGDPの約70%を占める個人消費にとって逆風になる可能性があります。
 

トランプ大統領による減税策は期待されたほどの景気刺激効果はないと思われ、当初は貯蓄率が上昇する程度かもしれません。しかし、全体的に見て、景気の急減速や株価の大幅な下落はないと考えています。リスクとしては、大方の予想ほど力強い景気回復が見られない可能性の方が高いと思います。
 

5. 今後数ヶ月の金融市場全般については、どのような見方をしていますか?

金融市場は全般に好ましい状態が続いています。量的緩和の結果、投資家、家計、企業は膨大なキャッシュを保有しており、超低金利が続き、マクロ経済の変動は抑制されています。経済成長率は全体として安定しており、世界金融危機後の尺度で見ればかなり高い水準にあります。一方、貿易をめぐる不透明感、米国のインフレ、中国の景気減速、トランプ減税の景気刺激効果が期待はずれに終わる可能性など、リスクは存在しますが、いずれも近い将来に主要資産市場の調整をもたらす原因になるとは考えていません。
 

投資機会という観点では、現時点でポテンシャルが最も大きいのはエマージング市場だと考えています。例えば、ロシアは制裁に関連したリスクがありますが、バリュエーションは魅力的です。ブラジルとメキシコも魅力的ですが、両国とも選挙を控えており、さらにメキシコにはNAFTAの将来に関する不透明感という追加のリスクがあります。リターンに比してリスクが高すぎるハンガリーやトルコなどの国は回避したいと考えています。

201802-430180

 

重要情報

当資料は、ティー・ロウ・プライス・インターナショナル・リミテッドが情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライスジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライス・インターナショナル・リミテッドの書面 による同意のない限り他に転載することはできません。

投資一任契約は、値動きのある有価証券等(外貨建て資産には為替変動リスクもあります)を投資対象としているため、お客様の資産が当初の投資元本を割り込み損失が生じることがあります。

当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.242%(消費税8%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。

「T. ROWE PRICE, INVEST WITH CONFIDENCE」および大角羊のデザインは、ティー・ ロウ・プライス・グループ、インクの商標または登録商標です。

ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社

〒100-6607 東京都千代田区丸の内1-9-2グラントウキョウサウスタワー7F

電話番号 03-6758-3820(代表)

金融商品取引業者関東財務局長(金商)第3043号

加入協会:一般社団法人 日本投資顧問業協会/一般社団法人 投資信託協会