ゲーム業界: デジタル時代における創造的破壊

ジョシュア・スペンサー , ポートフォリオ・マネジャー

要旨

ゲーム業界は世界的に著しい進歩を遂げ、業界トップ企業は製品のライフサイクルを通じて顧客との取引が増えるビジネスモデルを確立し、その恩恵を受けています。

 

デジタル・ゲームへの移行が急速に進んでいます。ゲーム業界にはそれ以外にも、ゲームをよく利用する年齢層の増加、技術的進歩、業界再編の進展などの追い風が吹いています。

 

大手ゲーム会社は対戦ゲームなどによる利用者同士の交流拡大の恩恵も受けています。

 

当運用ではデジタル主導のビジネスモデルを効率的に運用できる企業の発掘に努めています。また、市場シェアを自ら拡大できる企業を妥当なバリュエーションで購入したいと考えています。

 

ゲームのルールが変わった

ゲーム業界は成熟段階にあります。急成長を遂げてきたこの業界は50年近く前から存在しますが、現在は創造的破壊が起きそうな新たな局面に入りつつあります。家庭用ゲーム市場は過去10年で大きな変貌を遂げました。スマートフォンの普及により誰もが手軽にゲームをできるようになったほか、大容量メディア対応のパワフルなゲーム機の登場とインターネット通信の高速化がパッケージ型からデジタルへのゲーム形態の移行をさらに後押ししました。この結果、持続可能かつユーザーの利便性が高いビジネスモデルが生まれ、ゲームの利用が世界的に大きく増えています。

 

投資の観点から見た場合、ゲーム業界の最も興味深い点はソフトウェア業界と似た道をたどっていると思われることです。モバイル・ゲーム会社もゲーム機を避け、インターネット経由で効率的にゲームをアップロードまたアップデートする方法を選んでいます。つまり、スマホを持っている人なら誰でもアプリをダウンロードすれば、ゲームを利用できるということです。さらに、インターネット接続の利便性向上やゲーム機のストレージ容量拡大により、ゲーム本体や追加コンテンツを簡単にダウンロードできるようになりました。こうしたトレンドがゲーム業界に有効市場の拡大をもたらしています。

スマホを持っている人なら誰でもアプリをダウンロードすれば、ゲームを利用できる。さらに、インターネット接続の利便性向上やゲーム機のストレージ容量拡大により、ゲームや追加コンテンツを簡単にダウンロードできるようになった

ゲーム利用者の年齢層の変化も強力な追い風の一つです。利用者の多くは可処分所得のあるヤングアダルト層で、彼らはゲームへの支出意欲が強く、ゲームに対する出費は娯楽費と同じと考えているようです。実際、ゲームの時間当たりコストは他の娯楽形態に比べると依然低い水準にあります。つまり、彼らはより多くのお金をゲームに使うだけでなく、より多くの余暇をゲームに費やしているということです。ニールセンが最近発表したレポートによると、ゲーム利用者は平均で週約6.5時間をゲームに費やしています。エンターテイメント・ソフトウェア・アソシエーション(ESA)によると、マルチプレイヤー・ゲームの最も頻繁な利用者は平均でオンライン・ゲームを週6時間、オフライン・ゲームを週5時間プレイしています。また、デジタル・ゲームへの移行が進み、ゲームに費やす時間は一段と増えています。ニールセンの調査では、パッケージ型ゲームよりデジタル・ゲームを好むゲーム機及びパソコンによるゲーム利用者はいずれもプレイ時間が以前より長くなったことも分かっています。

 

テクノロジーのパラダイム・シフト

技術的進歩がパラダイム・シフトを促しており、ゲーム機はますます家庭用娯楽システムの主流とみなされています。ESAによると、米国では半数近くの家庭にゲーム機があり、マイクロソフトのXbox One やソニーのPlayStation 4はスマートテレビとしても機能し、ネットフリックスやアマゾンのプライムビデオ、その他のストリーミング・サービスにもアクセスが可能です。スマホは家庭以外での有効市場の拡大において引き続き中心的役割を果たしており、ユーザーはますますモバイル・ゲームにお金を使うようになっています。ゲーム業界は2000年以降、年々拡大しており、スマホは業界の成長を加速する原動力となっています(図表 1)。

 

図1: ゲーム購入額の変遷

2016年12月31日時点

出所:エレクトロニック・アーツの投資家向けプレゼンテーション資料

ゲーム本体購入後もデジタル・コンテンツの追加購入により、利用者はお気に入りのゲームをより楽しむことができ、ゲーム会社は知的財産権の収益化を進めることができる

ゲーム利用者の熟練度が増すにつれ、彼らの期待値も高まってきます。利用者は今日、没入感のあるマルチプレイヤー・ゲームでは凝ったグラフィックスや複雑なストーリーラインを求めています。今では、プレイするゲームの数は絞り込みながらも、一つ一つにかける時間は長くなる傾向にあります。こうした要求に加え、プラットフォーム全般においてゲームをサポートするコストが重なり、過去10年は開発コストが増加しました。また、デジタル・ゲームへの移行が進んだため、ゲーム・メーカーはユーザーの利用状況を随時調べ、コンテンツを追加的に変更できるようになりました。このような変化は、十分な規模のビジネスと効率的な販売モデルを確立した大手メーカーに有利に働き、過去10年間で業界の再編が大きく進みました。この結果、かつては先の見通しが立たないと言われたこの業界も不透明感がある程度払拭されました。

 

技術的進歩や購入パターンの変化を受け、デジタル・ゲーム会社は安定的に収益を上げることができるようになっています。ゲーム本体購入後もデジタル・コンテンツの追加購入により、利用者はお気に入りのゲームをより楽しむことができ、ゲーム会社は知的財産権の収益化を進めることができます。それにより新規および継続中の収益フローをより高い利益率で確保できるようになります。ゲーム機やパソコン用ゲームのコンテンツの粗利益率は90%を超えます。大手ゲーム会社はこうした追加的なコンテンツの提供で継続的に効率性を改善し、コンテンツを制作すればするほど、ゲーム利用者はますますお金を払ってプレイする構図となっています。

 

これはゲーム業界にとって大きな成長機会と言えます。また、モバイル・ゲームは大半が無料でプレイできますが、利益率の高いデジタル・コンテンツをその後次々と投入し、その販売を通じて収益を獲得する仕組みとなっています。モバイル端末の有効市場が拡大するにつれ、モバイル・ゲームは今後も業界の成長をけん引する重要な役割を果たすでしょう。最後に、ゲームの完全ダウンロードへの移行は、ゲーム会社にとってさらなる収益拡大の要因となる見込みです。デジタル形式でダウンロードするゲーム機用ソフトの粗利益率が約80%であるのに対し、パッケージ型ソフトの粗利益率は60%程度です。ゲーム機のストレージ容量拡大、インターネットの高速化、そして利用者がデジタル商品の購入に慣れてきたことなどから、デジタル方式での完全ダウンロードによる売上が増え、ゲーム会社は粗利益率がより高いデジタル商品を重視することで収益の拡大を図れるでしょう。

 

世界的なイノベーション

今後最も成長が期待できるゲーム市場の一つはアジアで、同地域ではすでに「League of Legends」や「Dota 2」などのeスポーツが実際のプロスポーツに匹敵する人気を獲得しています。2016年に行われた「League of Legends」の決勝戦は視聴者数が1,470万人に達し、大会全体では合計4,300万人を記録しました。ちなみに、直近のNBA(全米プロバスケットボール協会)ファイナルの視聴者数はシリーズ平均で2,040万人でした。「League of Legends」のような対戦ゲームは利用者間の交流拡大とゲーム会社の収益拡大につながっています。

 

ゲーム業界におけるデジタル化の流れは競争だけでなく利益共有も促すため、社会的側面も収益拡大に寄与する見込みです。こうした娯楽形態は比較的新しいものですが、ゲーム会社には新しい視聴者層に実質無料で宣伝できるというメリットがあります。ゲーム実況配信最大手のトゥイッチ・インタラクティブの業績が好調なことからも、このトレンドは今後も続くと思われます。アマゾン傘下の同社は2015年初めに月間視聴者数が平均1億人を突破し、現在の視聴者数は1日970万人まで増えています。

 

最後に、ゲーム業界はスマホの継続的な普及や、デジタル情報と実際の映像を融合したVR(仮想現実)やAR(拡張現実)の興隆による恩恵を引き続き享受しています。

 

中国のインターネット・サービス最大手のテンセント・ホールディングスは、モバイル端末と同社の人気メッセージ・アプリ「WeChat」を通じて、利用者がゲームをより楽しめる工夫をしています。昨年夏にヒットした任天堂の「Pokémon GO」は、市場の見通しが明るいことを示す証左と言えます。任天堂は知的財産権に対するガードの固さで知られており、ARを活用することにより、最も市場価値の高い商品の一つであるポケモンをモバイル端末の世界に送り出しました。同社はそうすることにより、ファン同士を繋ぎ、ユーザー熱を刺激するようなゲーム体験を創り出しました。他の娯楽形態ではこれほど高い確率でイノベーションは起きていないため、ゲーム業界は娯楽分野において将来的に創造的破壊をもたらす存在となりつつあります。

 

市場シェアとバリュエーションに注目

ゲーム業界の企業についてボトムアップ分析を行う際、当運用では有効市場の拡大により企業が成長できる能力を重視します。最初にチェックするのは、企業の実績と知的財産のポートフォリオや、ゲーム本体の発売後も収益を上げる能力です。これらは市場シェアを高めるための土台となる重要な要素と考えています。

 

デジタル・ダウンロードによる売上の割合にも注目しています。成長余地が大きく、それを実現する力がある企業は投資対象として魅力的であり、引き続き注視する必要があると考えています。デジタル方式への移行はまだ比較的新しい動きであるため、当運用ではイノベーションを起こす方法を見つけようとしている企業を高く評価しています。

最初にチェックするのは、企業の実績と知的財産のポートフォリオや、ゲーム本体の販売後も収益を上げる能力。これらは市場シェアを高めるための土台となる重要な要素

米国のゲームソフト大手であるエレクトロニック・アーツは、上記の要素をどちらも満たす好例です。同社はFIFA(国際サッカー連盟)やNFL(全米プロフットボール・リーグ)など主要スポーツ団体公認のゲームを数多くそろえており、スポーツ以外の分野でも「Star Wars Battlefront」などの人気ソフトがあります。また、エレクトロニック・アーツは自社プラットフォーム内で利用者同士が交流できるユーザーの利便性が高い会員向けソフトを提供しています。このように強力な商品群に加え、同社はゲーム内の課金により収益拡大を図る戦略を取っているため、デジタルへの移行により売上を伸ばすことができると予想されます。ただし、直近の第4四半期(2017年1-3月期)決算ではモバイル・ゲームの成長が鈍化しており、この点については我々も引き続き注視していきます。さらに、同社はいくつかの大型商品への依存度が高いため、これら主力商品の人気が低下した場合の影響を軽減するには、革新的な商品を引き続き開発する必要があります。

 

株式を購入する場合、バリュエーションが妥当な水準にあることも重要なポイントです。業界のトップ企業数社は今後数年にわたり業績を大きく伸ばすと予想されますが、こうした成長見通しは程度の差こそあれ株価に織り込み済みです。ファンダメンタル分析において、我々は株主価値を創出する最も好位置にある企業を発掘することに努めています。このため、当運用では企業予測を随時更新しており、ボラティリティが高まった時に市場の状況に応じて売買できるよう常に備えています。

 

まとめ

ゲーム銘柄への投資の成否は、一つの要因だけでは決まりません。業界内の最近の変化により、すでに存在するいくつかの追い風の恩恵を受けているビジネスモデルがより強固なものとなり、ゲーム銘柄は上値余地が拡大したと思います。しかし、これらの要因はいずれも単独では株主価値を大きく高めるには力不足であり、投資家には戦略的な対応が求められます。このため、当運用ではデジタル主導のビジネスモデルを効率的に運用できる革新的なゲーム会社の発掘に力を入れています。また、有効市場を自ら拡大できる企業を妥当なバリュエーションで購入したいと考えています。

 

重要情報

当資料は、ティー・ロウ・プライス・インターナショナル・リミテッドが情報提供等の目的で作成したものを、ティー・ロウ・プライスジャパン株式会社が翻訳したものであり、特定の運用商品を勧誘するものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。当資料における見解等は資料作成時点のものであり、将来事前の連絡なしに変更されることがあります。当資料はティー・ロウ・プライス・インターナショナル・リミテッドの書面 による同意のない限り他に転載することはできません。

投資一任契約は、値動きのある有価証券等(外貨建て資産には為替変動リスクもあります)を投資対象としているため、お客様の資産が当初の投資元本を割り込み損失が生じることがあります。

当社の運用戦略では時価資産残高に対し、一定の金額までを区切りとして最高1.242%(消費税8%込み)の逓減的報酬料率を適用いたします。また、運用報酬の他に、組入有価証券の売買委託手数料等の費用も発生しますが、運用内容等によって変動しますので、事前に上限額または合計額を表示できません。詳しくは契約締結前交付書面をご覧ください。

「T. ROWE PRICE, INVEST WITH CONFIDENCE」および大角羊のデザインは、ティー・ ロウ・プライス・グループ、インクの商標または登録商標です。

ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社

〒100-6607 東京都千代田区丸の内1-9-2グラントウキョウサウスタワー7F

電話番号 03-6758-3820(代表)

金融商品取引業者関東財務局長(金商)第3043号

加入協会:一般社団法人 日本投資顧問業協会/一般社団法人 投資信託協会